3/24 卒業式 校長式辞今年の春は、例年になく訪れが早く、学校の桜も、今日の喜びを祝うかのように満開になりました。 この春のよき日、令和5年度第69回卒業式を挙行いたしましたところ、葛飾区子育て支援部参事 橋本 幸夫(はしもと ゆきお)様、を始め、ご来賓の方々のご臨席を賜り、心よりお礼を申し上げます。 卒業生84名のみなさん、ご卒業おめでとうございます。 今、皆さんにお渡した卒業証書は、小学校の全ての学習を修了したという証(あかし)であります。卒業式は、小学校最後の授業です。みなさんにとって小学校の最後の授業を 校長の私がしたいと思います。 私が、皆さんと出会ったのは3年前。いきなり臨時休校から始まりました。小学校生活大事な後半3年間。「目に見えないもの」と戦った3年間たが、「目に見えないもの」に支えられた3年間でもありました。 コロナでたくさんの制限を受けた学校生活でしたが、皆さんは、いつも笑顔を忘れず、特に最後の一年は、最高学年として、 委員会やクラブ活動では、リーダーシップを発揮し、縦割り班活動では、仲間と協力し、下級生を楽しませてくれました。 北野小の6年生の伝統であるマーチングバンドは、練習を重ね素晴らしい演奏を披露してくれ、今年の6年生も、その姿は下級生のあこがれでした。昨年11月の地域パレードでは、地域を凱旋し3年ぶりに学校に戻ってきました。校門で迎え待つ保護者や教職員にとって、力強く演奏しながら学校に近づいてくる皆さんの姿は、とても感動的でした。 今日、門出の言葉とともに披露する歌声は、6年間の集大成の一つです。 さて、皆さんが今手に持つ卒業証書に書かれた名前の横には、あなたの生年月日、あなたが生まれた日が書かれています。 あなたが生まれた日は、あなたのお母さんが命がけで頑張った日。 あなたが生まれた日は、家族のみんなが、初めてあなたを抱きしめてくれた日。 命がけで頑張ったお母さんや愛情深く抱きしめてくれた家族に 大きな試練が降りかかりました。 それは、皆さんが生まれた今から12年前。平成23年3月11日、東日本大震災が起きました。地震や津波で多くの尊い命がなくなりました。 皆さんの中には、あの震災の一週間前に生まれた人がいます。皆さんの中には、震災の翌日に生まれた人もいます。 もちろん、まだ0歳の赤ん坊だったり、お母さんのお腹の中にいたりしたので,震災の記憶はないと思いますが、想像してみてください。 あの日、大きな揺れを感じて、生まれたばかりのあなたのところに駆けつけ、必死に守ろうとするお母さんの姿を。 余震が続き、足元が揺らぐと気持ちも揺らぐ不安の中、いつ何が起きても、赤ん坊のあなたから目を離さなかったお母さんの姿を。 放射能の不安の中、ミルクや水の確保に奔走していた家族の姿を。 あの日、3月11日に、あなたのお母さんに何かあったら、あなたのお母さんや家族があなたを守っていなかったら、あなたは今ここにいなかったかもしれません。 今、私たちは、自分の命を当たり前のように生きていますが、命はあって当たり前ではなく、多くの人の支えでおたがいに生かされているのです。どうか、「生かされた大切な命」を、これからも力強く大切に生きてください。 東日本大震災で原発の事故により、放射能が漏れ、住んでいた自分の家に住めなくなり、何年もふるさとに帰れなかった福島県飯館村では、3月11日を「あたりまえのことをありがたいと思う日」と決めたそうです。 ご飯が食べられること,お風呂に入れること、勉強ができること,家族・友達・先生がいること,自分の家・学校があること。これらすべてが「当たり前のこと」ではなくなった12年前の東日本大震災を忘れないで,「当たり前のこと」に心から「ありがとう」の気持ちをもとう、今日一日を一生懸命生きよう、嫌なこと・困難なことがあっても,頑張ろう、震災で亡くなった人の分まで一生懸命生きようというという願いが込められています。 いつものように朝ランドセルを背負い、友達に「おはよう」と顔を合わせ、共に学び、遊び、時には喧嘩したこと、先生に時には叱られ、時には励まされながらも、色々なことを教わり、過ごした小学校生活は、明日からもうありません。 毎週、ズーム朝会での校長の話を聞くことも、じゃんけんをすることも、もうありません。「当たり前」に過ごしてきた小学校生活は、たくさんの人の愛情や思いがつながっていたから 続いたことなのです。 今、世界で、戦争や災害が起きていて、命がけの毎日を送っている人々がいる中、今日の式ができることは、とても幸せなことだと思います。しかし、自分たちは幸せだと感じるだけでなく、周りの人、困っている人、苦しんでいる人を助けるために、みんなが笑顔になるには、自分は何をすべきか、そのために、中学校へいっても、しっかり勉強をしてください。 手のひらをみてください。 小指、薬指、中指、人さし指、親指ですが、手のひらを広げ、薬指、中指、人さし指をまげてください。小指と親指が残りました。 小指はみなさんです。親指は、みなさんの親、担任、お爺さんお婆さんなど、皆さんの周りにいる人たちです。 そっと、小指と親指を近づけてください。 親指は、自然と小指の方に向きます。 あなたがどこを見ている時でも、あなたの親、先生、多くの人たちがあなたを見守っているのです。 辛いこと、寂しいこと、苦しいことがあった時、歯を食いしばり、手を握りしめ、そして、そっと小指と親指を立ててみてください。どんな時でも、あなたは一人ではないのです。必ず誰かがあなたを温かく、見守っています。 在校生の代表として、見送る5年生の皆さん。4月からはいよいよ君たちの出番です。最高学年のバトンをしっかり引きついでください。 保護者の皆様、本日は誠に、おめでとうございます。お子様の晴れ姿に感無量なものがおありのことと思います。お子様は、この6年間の学校生活で、大きく成長しました。手をかける段階から、見守る段階にいよいよなってきました。様々な課題にこの先も出会うことと思いますが、お子様を信じ、温かくも見守り導きください。長い間、いただきました本校へのご厚情に深く感謝いたします。 ご来賓の地域の皆様にも、あたたかいご理解とご支援を賜りました。コロナ禍にもかかわらず子どもたちにたくさんのチャンスを与えていただき、夢を育んでいただきました。本当にありがとうございました。 卒業生の皆さん。勇気を翼にこめて いよいよお別れの時が迫って来ました。 最後に、はなむけに この言葉を送ります。 チョウも ヘビも もがいて脱皮して大きくなる 卒業は脱皮だ これをもちまして、私の式辞といたします。 令和5年3月24日 葛飾区立北野小学校校長 景山与賜也 |
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